【Abong】機械式時計の組み立てキット(木製振り子時計)
こんにちは、alohaです。
機械式時計という物を知っているでしょうか。
最近はスマホでも時間を確認できるので、家に時計を置いていない人も多いかもしれませんが、駅や会社、学校等の多くの場所で時計を目にします。
時計の種類は大きく分けて以下の2種類がありますが、現在、市販されている時計の多くは①のクォーツ式だと思います。
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① クォーツ式 |
② 機械式 |
動力源 |
電池 |
重りやゼンマイ |
誤差 |
1ヶ月に30秒程度 |
1日に30秒程度 |
価格 |
数百円〜1万円程度 |
3万円〜1000万円以上 |
この時計という機械に求められる機能は、『現在時刻を知らせる』というシンプルな物ですが、販売価格の幅がとても広い事に驚かされます。
必要な機能は同じなのに、ここまで価格差のある物は他に無いのではないでしょうか。
まさに趣味、嗜好の世界ですね。
①のクォーツ式の方が誤差が少なく、価格も安いので普通はこちらを買うと思いますが、②の機械式時計も時計好きの間では根強い人気があります。
時計好きの人達を惹きつける機械式時計の魅力は何でしょうか。
それはきっと、時計の心臓部(脱進機)が時を刻む速度をコントロールして、複雑に噛み合った歯車の動く様子が面白いという所だと思います。
私も機械設計の仕事をしているので、機械式時計の魅力は理解できますが、その構造についてはよく分かっていませんでした。
インターネットで機械式時計の構造を調べてみると、その歴史は古く、最初に発明されたのは1300年代の様です。その後、ホイヘンス、ブレゲ等の多くの人達によって精度が飛躍的に改善され今日に至っているとの事。
インターネットから得られた情報で構造はおおよそ理解できましたが、細かな部分を理解するには実際に触って作ってみるのが良いと思い、機械式時計の組み立てキットを購入しました。
<木製振り子時計の組み立てキット>
木製の振り子時計はWooden clockと呼ばれていて、海外では木工工作の趣味として人気がある様ですが、国内ではほとんど情報がありません。
Amazon経由で海外の店舗から購入したところ、3週間位で到着しました。
箱の中には、平板をレーザーカットしたパーツと英文の組み立て説明書が入っています。
それほど高価な組み立てキットではないので仕方ないと思いますが、部品単体で見ると少し作りが雑な印象を受けます。本当に動くのだろうかと半信半疑のまま、とりあえず組み立てを始めます。
<あると便利な工具>
組み立てキットの中に工具は入っていないので、以下を用意しておくと良いです。
- 糸のこ
- 紙やすり(粗さ400番、240番)
- 棒やすり(丸、半丸、平)
- 鉛筆削り
- 木工用ボンド
<組み立て手順>
① パーツの切り出し
レーザーカットされた平板からパーツを切り出します。各パーツは外周が何箇所かフレームとつながっているので、この部分を切断してパーツを切り出します。丸い部品は指で押し出すだけで簡単に取れますが、ギヤは力任せに取り出すと壊してしまいそうなので、糸のこで慎重に切り離していきます。
② バリ取りしてグラファイトを塗る
切り出したパーツに紙やすりをかけてバリを取り除きます。ギヤは歯面をやすりで削って滑らかにした後、キットに付属の鉛筆で歯面を塗りつぶします(鉛筆に含まれるグラファイトによって、ギヤの潤滑が良くなるとの事)。
③ ギヤを組み立てる
組み立て説明書に沿ってギヤを組み立てていきます。分を示すギヤにはクラッチが組み込まれており、重りを巻き上げる際には中央の突起のある板が時計回りに回転するため、その回転が外側のギヤに伝わらない様になっています。一方、重りが重力に引かれて下がる際には、突起のある板が反時計回りに回転するので、突起が周りの爪に引っかかってその回転が外側のギヤに伝わる様になっています。
④ ベースプレートを組み立てる
ベースプレートに時刻合わせ用のスライダーとシャフトを打ち込み、ギヤが挿入されるシャフト部分を鉛筆で塗りつぶしてグラファイトを付けます。
⑤ 振り子を組み立てる
振り子式時計は単振り子の等時性を利用しているので、振り子の周期(1往復にかかる時間)は振り子の長さによって決まります。周期2秒の前提で設計されているこの時計の振り子の長さは理論上は99 cmになります。
数式では以下の通りで、は振り子の長さ、Tは振り子の周期、gは重力加速度です。
T=2[s], g=9.8[m/]とすると、
[m]=99 [cm]
⑥ ベースプレートにギヤを組み付ける
ベースプレートのシャフトにギヤを挿入します。機械工学の世界では噛み合った大ギヤと小ギヤの歯数の比を減速比(または速比)と言いますが、時計の場合は、
- 秒針が1回転すると分針が1/60回転する
- 分針が1回転すると時針が1/12回転する
様に設計されていれば良いことになります。このキットのギヤを調べてみると、秒を示すギヤ(ガンギ車)と分を示すギヤの減速比は60になっており、分を示すギヤと時を示すギヤの減速比は12になっていますね。
秒と分を示すギヤの間の減速比
分と時を示すギヤの間の減速比
秒を示すギヤ(ガンギ車)は1分間で1回転すれば良い事になりますが、ガンギ車の歯数は30枚なので、振り子が周期2秒で動けばガンギ車は1分間で1回転するので時計として成立する訳です。時計の秒をコントロールしているガンギ車と振り子の部分は「脱進機」と呼ばれ、機械式時計の中で最も重要な部分なので、時計の心臓部とも呼ばれています。
⑦ 振り子と重りを取り付ける
振り子と重りを取り付けて完成です。重りが重力に引かれて下がる事で分を示すギヤが回転し、その回転が秒を示すギヤ(ガンギ車)に伝達されます。ガンギ車はアンクルを介して振り子に繰り返し揺れ動くためのエネルギーを供給し、振り子は等時性によって正確な周期で揺れ動く事で時計は正確に時を刻みます。
実際に動かしてみると、残念ながら振り子が5往復くらいした所で動きが止まってしまいました。予想はしていましたが、ガンギ車から振り子にエネルギーがうまく供給されていない様です。部品の精度とか組み立ての精度とか接触部の摩擦などのバランスが取れていないとうまく動かないのでしょうね。部品の表面を削って滑らかにする等、色々と試してみます。
<まとめ>
機械式時計の仕組みを学ぶために、Abongの機械式時計の組み立てキットを購入して振り子時計を組み立ててみました。やっぱり自分で手を動かしながら組み立てを行うと、構造をしっかりと理解できますし、難しいポイントも分かってきます。今度は自分で設計してオリジナルの時計作りにトライしてみようと思います。
それでは、また。